行政書士三品美咲事務所
日本に住む特別永住者の中には、戦後の国籍整理の過程で「朝鮮籍」のまま登録されている方が少なくありません。
現在でも在留カードの「国籍・地域」欄に「朝鮮」と記載されている方は、法的には国籍未定者(国際的にはどの国家にも属していない状態)です。
この状態を整理する方法の一つが、韓国籍への変更(国籍選択)です。
この記事では、行政書士の立場から、朝鮮籍の方が韓国籍を取得する際の流れ・必要書類・注意点をわかりやすく解説します。
まず、「朝鮮籍」は国籍そのものではなく、日本政府が外国人登録制度上で用いた便宜的な表記です。
つまり、
韓国籍でも北朝鮮籍でもない「国籍未定者」
として扱われています。
そのため、朝鮮籍の方は国際法上の「国家の保護」を受けることができず、海外渡航時には日本の再入国許可書(みなしパスポート)を使う必要があります。
これに不便を感じ、「韓国籍へ変更したい」という相談が増えています。
関連記事【在日朝鮮人の法的地位と特別永住制度】【在日韓国人と在日朝鮮人の違いとは?】
もあわせてご覧ください。
韓国政府は「大韓民国国民登録」を行うことにより、韓国籍を取得したと認めています。
朝鮮籍の方がこの登録を行うと、日本の記録上も「朝鮮」から「韓国」へと変更が可能になります。
この手続きは韓国政府が行う「国籍取得」+日本での「国籍変更届」の二段階構成になっています。
したがって、行政書士としては両国の制度を正確に理解し、手続きを支援することが求められます。
以下は、実務上の一般的な流れです。
【ステップ1】韓国大使館・領事館で「国籍取得」手続き
韓国大使館または総領事館(例:東京・大阪・名古屋など)に申請
必要書類を提出し、「大韓民国国民登録」を行う
登録完了後、「家族関係証明書」「基本証明書」「国籍取得証明書」などが発行される
主な必要書類例
申請者本人の身分証明書(在留カード、特別永住者証明書)
写真(3×4cm)
戸籍関係の証明資料(家族・出生情報)
日本の住民票・在留カード写し
手数料(数千円程度)
審査期間は通常2〜4か月ですが、家族関係の確認に時間を要する場合もあります。
【ステップ2】日本の市区町村役場で「国籍変更届」
韓国での登録が完了したら、次に日本で手続きを行います。
国籍変更を証明する韓国書類を取得
日本の市区町村役場に「国籍変更届」を提出
住民票・在留カード上の「国籍・地域」が「韓国」に変更される
このとき、入管庁にも自動的に情報が連携され、在留カード記載の「国籍」欄が更新されます。
行政書士として同行・代理申請を行う場合は、書類の原本確認と翻訳の正確性が重要です。
✅ メリット
韓国政府発行のパスポートを取得できる
海外渡航・留学・就職が容易になる
韓国の戸籍制度(家族関係登録)を利用できる
帰化申請の際に、必要書類(韓国発行証明書)を揃えやすくなる
⚠️ デメリット・注意点
手続きに時間がかかる(2〜6か月程度)
韓国籍取得後も、日本の「特別永住資格」は自動では変わらない
韓国籍に変更しても、北朝鮮関連団体との関係を理由に入国制限を受けることがある
将来的に「兵役義務」が課される可能性(年齢・性別による)
そのため、国籍変更が目的なのか、帰化への準備段階なのかを明確にしておくことが大切です。
韓国籍への変更は、外国籍を韓国に定める行為です。
一方で、帰化は日本国籍を取得する行為であり、法務大臣の許可が必要です。
| 比較項目 | 韓国籍への変更 | 帰化(日本国籍取得) |
|---|---|---|
| 手続き先 | 韓国大使館・日本の役所 | 法務局 |
| 得られる地位 | 韓国国籍 | 日本国籍 |
| 永住資格 | 維持(特別永住者のまま) | 消滅(日本人となる) |
| 審査期間 | 約2〜6か月 | 約1〜1.5年 |
| 難易度 | 比較的容易 | 審査が厳格 |
| 主な目的 | 国籍整理・パスポート取得 | 日本への完全定住・法的安定 |
行政書士として相談を受ける際には、
「将来どこで生活したいのか」「どの国の制度を利用したいのか」
を丁寧に確認することが重要です。
韓国籍変更・国籍選択の手続きでは、日本・韓国両国の書類形式や法制度の理解が必要です。
行政書士三品美咲事務所では、以下のサポートを行っています。
必要書類のリストアップと取得方法の案内
韓国書類の翻訳・認証対応
国籍変更届・在留カード更新の同行支援
帰化申請への移行サポート(希望者)
国籍は「法的な身分」であると同時に、「人生の選択」でもあります。
制度を正しく理解し、後悔のない選択をするために、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
朝鮮籍から韓国籍への変更は、単なる書類上の修正ではなく、自分の国籍と向き合う重要な手続きです。
韓国籍を取得することで、国際的な活動や法的安定性が広がる一方、制度上の影響も存在します。
行政書士として大切なのは、書類の整備だけでなく、
「その人がどんな未来を望んでいるのか」
を一緒に考える姿勢です。
行政書士三品美咲事務所では、特別永住・韓国籍変更・帰化手続きなど、在日外国人の方々の人生に寄り添う支援を行っています。
国籍・在留に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。