行政書士三品美咲事務所
日本に住む「在日朝鮮人」の方々は、戦前の朝鮮半島統治期に日本へ渡り、戦後も日本に残った人々とその子孫を中心としています。
同じく「在日」と呼ばれる在日韓国人と共通点が多い一方で、国籍上は「韓国」とも「北朝鮮」とも明確に定まっていないケースが存在します。
行政書士として実務を行う際、この「朝鮮籍」という特殊な法的地位を正しく理解することが極めて重要です。
本記事では、在日朝鮮人の法的立場・特別永住制度・帰化に関するポイントをわかりやすく整理します。
「在日朝鮮人」とは、戦前の日本統治時代に日本に渡った朝鮮半島出身者と、その子孫を指す総称です。
1945年の日本の敗戦・朝鮮半島の分断(北と南の成立)によって、彼らの国籍は非常に複雑な状況になりました。
1947年、日本政府は「外国人登録令」により、朝鮮半島出身者を「朝鮮籍」として登録しましたが、これは国際的に承認された国家籍ではなく、日本国内上の便宜的な分類です。
その後、韓国政府の樹立(1948年)に伴い、多くの人が韓国籍を選択しましたが、依然として「国籍を選択しなかった人」=朝鮮籍のままの人が現在も一定数存在します。
「朝鮮籍」は、日本の入管制度上では「国籍不明者」として扱われます。
つまり、韓国籍でも北朝鮮籍でもなく、国家としての外交的保護を受けない立場にあります。
このため、実務上では次のような特徴があります。
在留資格は「特別永住者」または「永住者」であることが多い
パスポート(旅券)が発行されないため、**再入国許可書(みなしパスポート)**で海外渡航する
国籍証明書がないため、各種手続きで書類確認に時間がかかる場合がある
韓国籍への変更(国籍選択)や帰化申請の際に追加書類が必要になる
行政書士としては、「朝鮮籍=無国籍」と誤解されがちですが、正確には国籍未定者であり、特別永住の地位をもつ外国人という理解が必要です。
在日朝鮮人の多くは、「特別永住者」として日本に在留しています。
この制度は、1952年のサンフランシスコ平和条約の発効により、旧植民地出身者が一斉に日本国籍を喪失したことを受け、法的安定を図るために設けられました。
特別永住者の特徴
・在留期間は無期限(在留カードの更新は7年ごと)
・再入国許可は簡易手続きで可能
・退去強制の対象外となる事由が限定
・社会保障・就労・教育など、ほぼ日本人と同等の権利
この制度によって、在日朝鮮人は日本社会に安定して暮らすことが可能となりました。
しかし、国際的には依然として「国籍を持たない」状態であるため、海外渡航や相続関係などでは複雑な法的問題が残っています。
在日朝鮮人の中には、長年日本で生活し、日本国籍の取得(帰化)を希望する方も多くいます。
帰化申請の際には、次のような点に注意が必要です。
・「朝鮮籍」から直接日本国籍へ帰化することが可能(韓国籍取得を経る必要はない)
・戸籍・家族関係を証明する書類がない場合、陳述書や日本側資料による補完が求められる
・納税証明・職業・生計などの審査基準は、韓国籍者と同様に適用される
・帰化許可後は、氏名表記(漢字・読み)を自由に選択できる
行政書士としては、法務局での相談前に「身分関係・居住実績・納税記録」を整理し、帰化申請書類一式を正確に整えることが重要です。
行政書士の現場では、在日朝鮮人に関して以下のような相談を受けることがあります。
「自分が朝鮮籍か韓国籍かわからない」
「再入国許可書が切れる前に更新したい」
「帰化したいが、親族の国籍が不明で書類が揃わない」
「朝鮮籍の配偶者と婚姻手続きを進めたい」
「韓国籍へ変更したいが、方法がわからない」
これらは個別に対応方法が異なりますが、共通して言えるのは、
“国籍や書類に関する手続きを一人で抱え込まないこと”です。
専門家が介入することで、行政手続きがスムーズに進むケースが多くあります。
在日朝鮮人の方々は、戦後日本の中で、国籍や制度の狭間に置かれながらも、地域社会の中で生活を続けてこられました。
法的には複雑な位置にありますが、その根底にあるのは「ここで暮らし続けたい」という人間の自然な願いです。
行政書士の役割は、書類を作ることだけではありません。
法律と生活のあいだを“つなぐ”存在として、在日朝鮮人の方々が安心して暮らせる環境を整えることが、専門職としての使命だと考えています。
行政書士三品美咲事務所では、
・特別永住・帰化・在留手続きのサポート
・国籍未定・身分関係書類の整理
・韓国籍変更・婚姻・相続などの国際法務支援
を通じて、在日朝鮮人の方々の暮らしを丁寧にサポートしています。
制度に関するご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。