
本籍地がない在日韓国人の海外旅行

行政書士三品美咲事務所


お世話になっております、三品です。
今回このような記事を書こうと思った経緯について少しお話します。
私は在日韓国人の両親から産まれた在日韓国人です。
両親は一度も日本から出たことはなく、出産に関わる韓国側の手続き等も全く無知な状態で私を産んだため、日本にしか出生届を出しておらず、私は国籍は韓国なのに本籍地がないという状態に陥りました。
この状態で日本で生活していると問題になってくるのが、パスポートの取得や、結婚をするときです。本籍地がないため(戸籍謄本が取れない)、日本のパスポートはもちろんのこと韓国パスポートも取れません。両親に相談をしても「わからない」で済まされるし、韓国大使館で相談しても「取れません」の返事が返ってくるのみでした。
私は一生海外旅行にいけないのかと落ち込んでいたところ、散々解決策を調べて出会ったのが臨時パスポートというものでした。
臨時パスポートとは
通常のパスポートの代わりに一時的な旅行文書として発行されるものです。
(単数旅券ともいいます。)
一般的には、旅行者が急な旅行やパスポートの紛失、盗難、損傷などの緊急事態に直面した場合に利用されます。
このように臨時パスポートは一時的な解決策として提供され、通常のパスポートと同じように一定の条件や制限があります。
この臨時パスポートは本籍地がなくても、その趣旨を伝えれば取得可能です。
また、電子パスポート(IC旅券)ではありませんので、入国できる国は制限されており一部の国には行けませんが、私が行きたかった韓国へ旅行をする分には問題ないので発行の手続きをしました。
申請の流れ
まずお住まいの地域にある韓国大使館(領事館)へ向かい、臨時パスポートを取得したい旨を伝えます。
そうすると申請用紙がもらえるので記入し、申請用紙と一緒に手数料を払って申請完了です。
(写真は大使館内に設置された機械で無料で撮れます。)
手数料は6,000円程で、臨時パスポートの受け取り方法を郵送にした場合は、レターパック代も支払います。
申請の際、在留カードの提示を求められますので、お忘れなきようお願い致します。
ここで唯一注意しなければならないことが、自分の名前をハングル且つ韓国読みで書かないといけない事です。
私の韓国名は【金美咲】ですが、これをそのまま【キンミサキ】という風にハングルで書いても受け付けてもらえません。金は【キム】、美咲は【ミソ】と韓国読みにしてハングルで【김미소】と記入しなければなりません。
自分の名前くらい知っていて当然だと思われると思いますが、在日韓国人の私たちは自分の韓国名すら知らない方も意外と多いです。現に私も最初は知りませんでした。
受け取りまでの期間
窓口では1ヶ月くらいと聞いていたんですが、実際は2週間くらいで自宅に届きました。
パスポートを手にした時の感動は今でも忘れられません。
臨時パスポートに関する事はネットでもあまり見かけないですし、本籍地がないんだよねと誰かに相談したところで不思議そうな顔で見られるだけだったので、本当に嬉しかったです。
臨時パスポートの使用方法
臨時パスポートは1年間の有効期間内に1回(往復1回)に限り使用可能なパスポートです。
日本(旅券発行地)を出国し、再び日本(旅券発行地)に帰国すると、その有効期間が失効するため、有効期間が残っていても2回目以降の利用はできません。
日本(旅券発行地)を出国後、有効期間内であれば複数の国に入国できますが、同じ国に2度入国したり、途中で同じ国を経由することはできませんのでご注意ください。
例えば
- 日本 → 韓国 → 中国 → 日本は 可能
- 日本 → 韓国 → 中国 → 韓国 → 日本は 不可能
国によって入国条件(例: 旅券の残存有効期間など)も異なるため、訪問予定国の大使館に事前にお問い合わせください。
出国時
日本人・外国人レーンではなく、有人の専用レーンがあるのでこちらに並びます。
この際在留カードは必須です。
みなし再入国許可の用紙に必要事項を記入し、パスポートにホッチキス止めしてもらいます。
機内に乗り込んだら入国申告書をもらえるので、それも記入して入国の際に提出します。
帰国時
出国時にパスポートにホッチキス止めしてもらった、みなし再入国許可の用紙の片割れを記入し、特別永住者のレーンに並んでこれを提出します。
帰国時は入国申告書の提出は必要ありません。
※上記は羽田空港国際便での一連の流れになります。
まとめ
在日韓国人の方が抱えている問題は多岐にわたると思います。
その中でも今回は海外旅行に関して記事にしてみました。
抱え込まれている問題のお役に立てれば幸いです。
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